被害者意識が強い人は、あなたの周りにも結構いるのではないかと思います。また自分自身が被害者意識の強い人だと思っているなら、改善して手放す方法を知りたい、そう思う人も意外と多くいるのではないかと想像します。

そこで、こちらでは、コーエン兄弟の映画「ノーカントリー」を参考に、被害者意識の強い人とはどんな人か、また被害者意識を改善したり手放したりできるのか、そのあたりを映画のキャラクターを例にとってお話してみたいと思います。

イヴァナチャバックは、よく俳優たちに「被害者になるな」という言葉を使いますが、そのことも非常に関係してくる内容になると思います。

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被害者意識とは?

そもそも「被害者意識」とは、どう定義されている言葉なんでしょうか?

以下、コトバンクを引用してみます。

必ずしも被害を受ける立場にあるわけではないのに、自分は被害を受けている、受けるに違いないと思い込むこと。
また、自分の誤った行為を正当化するために、責任を他者や生育環境などに転嫁し、自分こそ被害者だと思い込むこと。

また英語では、

play the victim
pretend to be a victim
acting like a victim

こんな風に被害者意識について表現されるようです。

つまり、自分の身に起こったことに対して、「あたかも自分が被害者であるかのような」振る舞いをしたり、
そういう考えを持つことを「被害者意識」と定義している。洋の東西でも大きな違いはないようですね。

けれど、どうして被害者意識の強い人は、こういう思考や行動を取るのでしょう?

それは脳の機能、特に「無意識」の領域での判断と密接に結びついています。

付け加えると、被害者意識の強い人が「自分が被害者であるように思い込む」のは、自分自身が意識していない無意識にある「情動記憶(感情の伴った記憶)」と深く結びついています。つまり、過去の痛みを伴う記憶や体験です。

ですから、たとえ自分で被害者意識の思い込みが強いと自覚していても、ほぼ自分の意思では制御できない無意識の判断で自動的に「自分は被害者なんでは?」と思い込んでしまうということです。

脳というのは、危険や変化をとても嫌がります。

過去に体験したネガティブな感情を伴った記憶が強烈であればあるほど、二度と同じことが起こらないよう身を守るために「被害者であることを選ぶ」のです。一種の防衛本能といってもいいかも知れません。

映画「ノーカントリー」について

映画「ノーカントリー」(No Country for Old Men)は、コーエン兄弟が監督で制作した映画です。原作は2005年に発表されたコーマック・マッカーシーの小説『血と暴力の国』

2007年第80回アカデミー賞では作品賞・監督賞・助演男優賞・脚色賞の4冠を受賞しています。

個人的には、助演男優賞を受賞したシガー役を演じたハビエル・バルデムの怪演が特に印象に残っています。シガーは冷酷非情な殺し屋でとてもユニークなキャラクターでした。

簡単なあらすじを参考までにお話しておくと、

映画は、1980年代のアメリカ・メキシコの国境地帯を舞台に、麻薬密売に絡んだ巨額の金を巡って殺し屋・シガーが次々と人を殺していくサスペンスドラマです。

事件の発端は、ベトナム帰還兵のルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)が、狩の途中に偶然、銃撃戦で死んだ男たちの死体と200万ドルという大金を発見したこと。野ざらしのピックアップトラックの荷台には梱包された大量の麻薬が残っていました・・・。

大金の事情をすぐに察知したモスでしたが、金を持ち逃げしたことで、今度はギャングに雇われた殺し屋シガーに執拗に追われる身になってしまいます。モスは逃げられるのか?それともシガーに殺されてしまうのか?結末は是非、ご自分でご覧になってほしいと思います。

シガーから学ぶ「被害者意識の改善と手放す方法」

シガーという冷酷非情な殺人者が本当にすごく印象的で、圧倒的な存在感を放っています。とても血の通った人間とは思えないくらい、いとも簡単に人を次々に殺していくのです。けれど、その一方で、シガーはとても魅力的な男にも見えるから不思議です。

なぜなら、彼は「自分の得たい目的を得るために」、必死に彼なりの正義の行動をし続けるからです

ここで本題の被害者意識の話になりますが、シガーのキャラクターについて改めて考えてみましょう。

シガーは殺人者です。ですが映画では、彼の過去については一切、語られていません。ただ、その冷酷非情な圧倒的な行動を見ると、彼にとって人を殺すことは、なにかしら「過去に味わった圧倒的な負の感情」を乗り越えるための行動に見えるのです。

ここにおそらく、被害者意識の強い人がその意識を改善し手放す方法に繋がってきます。つまり、シガーには大きな目標・目的があるのだということです。

イヴァナチャバックも演技指導をする上で、よく「キャラクターを裁いてはいけない」と言います。つまり、どんな極悪非道な殺人者でも、彼らには彼らの事情があり、立ち向かい乗り越えていかなくてはならない過去があるということです。

誤解のないよう言っておきますが、別に殺人者や殺人を容認するのではありません。けれど、シガーにはシガーの「殺人の意味」があるという意味です。

そして、それはシガーが「得たい目的のための行動」なのです。

もうおわかりかも知れませんが、被害者意識の強い人は、脳の働きで無意識に被害者意識を持ってしまいます。それが、過去の辛い体験を再びしないために最良の判断だと脳はジャッジしているわけです。

ですから、それを改善し、被害者意識を手放すには、被害者意識の強い人が、「何がなんでも手に入れたい自分の目的」を作る必要があるのです。

被害者意識の強い人はよく考えてみてください。きっと過去の辛い体験がベースになっています。その過去の体験に立ち向かうことは、大きな障害です。その体験に立ち向かい乗り越えるためには「目指すべきゴール設定」が不可欠なのです。

スタッブ・キャスト

監督・脚本ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
製作総指揮ロバート・グラフ
マーク・ロイバル
製作スコット・ルーディン
ジョエル・コーエン
イーサン・コーエン
音楽カーター・バーウェル
撮影ロジャー・ディーキンス
編集ロデリック・ジェインズ
衣装デザインメアリー・ゾフレス
視覚効果ルーマ・ピクチャーズ
役名・役柄俳優名
エド・トム・ベル保安官トミー・リー・ジョーンズ
アントン・シガーハビエル・バルデム
ルウェリン・モスジョシュ・ブローリン
カーソン・ウェルズウディ・ハレルソン
カーラ・ジーン・モスケリー・マクドナルド
ウェンデル保安官助手ギャレット・ディラハント
ロレッタ・ベルテス・ハーパー
エリスバリー・コービン
ガソリンスタンド店主ジーン・ジョーンズ
ウェルズの雇い主スティーヴン・ルート

イヴァナチャバック・ワークショップ雑感

さて、クイズにもしましたが、イヴァナチャバック・来日ワークショプで、これまで最も多く取り上げられてきたのが、この映画「ノーカントリー」でした。全4回のうち、3回のワークショプでプレイヤーたちがこのシーンを演じてきたことになります。

冷酷な殺人者・シガーと対峙する金を持ち逃げしたモスの妻が相対するシーンです。

先ほどから何度も書いてきたように、過去のシガー役の俳優たちも、シガーが何を得たいのか?どういう目的を持って行動しているのか?を考え、自分の中にある過去の体験を用いて、それぞれのシガーを演じてくれたと思っています。

この作品は殺人の話なので表面的な解釈で毛嫌いする人は多いかも知れません。けれど、シガーも一人の人間として存在しているという視点で考えると、もっと作品の理解、人間理解にも繋がるようにも思います。

また今後も登壇するプレイヤーのために、イヴァナがこの作品を選ぶことがあるかも知れません。その時はまた「あなたなりのシガー」を是非探求してほしいと思います。