日本において「経営の神様」とも言うべき存在である、故・京セラ創業者・稲盛和夫氏が、以前経営破綻したJALをたった2年半で再建・復活させたのはよくご存知かと思います。

その稲盛改革の両輪となったのが、氏がもたらしたJALフィロソフィーという「意識改革」と「部門別採算制度(アメーバ経営)の導入」なのですが、僕が書きたいのは、前者の「意識改革」についてのお話です。

稲盛氏はその就任にあたって、JAL社員が共有すべき意識や価値観、再建に必要な考え方を浸透させるために、自らの言葉とその意味がしたためられた「教典」とも言うべきJALフィロソフィー手帳というものを配布し、「ひとりひとりがJALである」と全サービス・商品に携わる従業員全員に意識改革を迫りました。

そして、その結果、ひとりひとりの心を変えることに大きく貢献したことが、迅速な再建を支えたひとつの要諦だと言われています。

さて話は急に180度ぶっ飛びます。

実は僕、30年間吸っていた煙草を止めてから8ヶ月が経過、現在も禁煙継続中の身の上です。なぜ煙草を止めたのかと問われると、それこそたくさん理由が見つけられるのですが、「これからまだまだやりたいことが山積しているので、健康を維持するために禁煙を選んだ」とでも言っておきましょう……ありきたりですが。

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生活習慣を変えようと、思った

今までの悪習慣を改心して生活習慣を見直すなんて言えば、なんだか多少立派に聞こえますが、実に30年間も継続した悪癖から抜け出そうとするのですから、禁煙実践の実情はそう生半に甘くはありません。

実際は、煙草を無理やり拒否してみても、会いたくて会いたくて口寂しくて、ブリキがあれば即座に掻きむしりたいくらい”副流煙プリーズな状態”で、簡単な決意で始めた自己流の禁煙など容易く成就するはずもありません。

そんな自分の弱さと体たらくを知る賢明な僕は、禁煙外来にて投薬治療を選んだわけです。

さて投薬治療とはどういうものか?

少し説明を加えると、まずお医者さんとの面談で今までの喫煙歴や現在の体調などを聞かれ「本当に禁煙される意志がありますか?」「はい!もちろん!」という事になれば、まずは誓約書を書かされます。つまり「私は必ず禁煙を成功させます」と決意表明をし、医師や看護師さんの前でサインをするという簡単な儀式があるわけです。

そして、引き続き薬の説明があり、投薬治療の説明が始まるという段取りなのです。

と、話が若干逸れますが、ところで「喫煙者は、なぜ煙草を吸うとオイシイと感じるのか」ご存知でしょうか?

実は、喫煙者の脳内には、喫煙によって出来た「ニコチン受容体」があります。煙草を吸うことで補給されたニコチンが、その受容体にすっぽりと収まることで、脳内に快感を生じさせるドーパミンという物質を放出。

だから「煙草がオイシイ!」となるのですが、投薬治療に使われるチャンピックスという薬を飲むと、煙草のニコチンと同じ分子構造を持っているチャンピックスの成分が、先にニコチン受容体を塞いでしまい、それが故に煙草を吸ってもニコチンの入る受容体の受け皿に余りがないので、ドーパミンが出ない。吸ってもあまりオイシク感じないな、吸わなくても我慢出来るぞ、よし完全に禁煙するぞ、という結果に繋がるわけです。

しかも、禁煙外来を訪れた日(禁煙日)から1週間は、好きなだけ煙草を吸ってもいい、と指導される。

意外でしょ?

そのかわり、3日目までは薬を1錠、4日目からは朝と夜に1錠づつを必ず服用、つまり体内にチャンピックスの成分が必ず循環している状態にし、それを3ヶ月間休まずに続けるというのが、この投薬治療の全体像なんです。

僕の場合、想像以上にこの禁煙薬の効き目は大きく、1ヶ月も経たないうちに薬を服用をせずとも煙草を吸わないで余裕で過ごせるようになり、先生の指導を守らずに、ひと月あまりで投薬をやめてしまったわけですが、その後も6ヶ月間、禁煙を継続できました。

が、話の成り行き上、もう既にどのような結果になったかは容易く想像がつくと思います。

7ヶ月目の禁煙期間に突入した頃、連日の撮影現場での仕事に追われるうちに、軽い気持ちで一本だけ吸ってみたわけです。すると、それからはもう30年間の悪癖で培った怒濤のニコチン攻めに簡単に陥落し、禁煙前にも増し増しヘビースモーカーが誕生というシナリオになってしまったわけです。

でも、僕は全然気にしなかったんです。

なぜなら、薬はまだ処方された半分も残っているし、また投薬治療をすれば、いつでも簡単にやめられると思っていたからです。

でも、それは結果からいうと甘い幻想でした。

禁煙に学んだ決意と想像力の大切さ

撮影もひと段落して「よし、禁煙だ!」と前回にならい、余っていた薬で投薬治療を始めたのですが、完全禁煙をすべき1週間後になっても、まったく煙草の量が減らない。というか、薬が全く効かなくなってしまったようなのです。

なぜだ? どうして……?

何度となく過去の体験を思い浮かべてみると、ひとつだけ思い当たる節がありました。

それは禁煙外来を訪れ、初日に書いた誓約書のことです。

禁煙出来ない理由が、まさに全段で語ったJAL再生の理由と類似点があると気づかされたのです。

京セラ・稲盛名誉会長がJAL再建を頼まれ、京セラ・フィロソフィー(哲学)とアメーバ経営を携えて出向いたその初日、就任の挨拶で、有名な思想家・実業家である中村天風の言葉を引用し、どのような環境変化があろうとも必ず目標達成する「燃える闘魂」を説いたとされています

その中村天風の言葉は、

新しき計画の成就は、只不屈不撓(ふとう)の一心にあり

さらばひたむきに、只想え、気高く、強く、一筋に。

という言葉でした。

この言葉の意味は「新しい計画を成し遂げるには、くじけず、強烈に思い続ける心、そして、その強い決意にかかっている」ということでした。

何事を始めるのも、この「心」、マインドの作業なしでは決して達成成就がないのだと、この言葉は教えてくれます。僕の2度目の禁煙がもろくも失敗したのは、なにも薬が効かなかったからではない。充分に「本当に禁煙するのか」と自問自答して、固い決意のもとに進めなかったのが失敗の原因だと思うのです。

それが証拠にその後、自分で誓約書をしたため、もう一度強く禁煙と将来のビジョンを思い決意してからは、見事現在まで8ヶ月の禁煙が続いていることが、いかに「一筋に思い続ける」ことが目標達成には必要であるかの一つの証明になっていると思えるのです。

僕の禁煙も、JAL再生のシナリオも、すべて「強烈に思い続けること」がベースになっている。

あなたのやりたいことを強く望み、その理想の姿になった自分を強く強くイメージすることが、結局はあなたのゴールや目標を手に入れる一番の方法だと思います。コーチングという心理学を学んだ後は、よりその思いが正しかったのだと知りました。

新しき計画の成就は、只不屈不撓(ふとう)の一心にあり

さらばひたむきに、只想え、気高く、強く、一筋に。

あなたの手に入れたいゴールはなんですか? そのお手伝いを出来る日を楽しみにしています。